海外文学読書録

書評と感想

澤田幸弘『斬り込み』(1970/日)

斬り込み

斬り込み

  • 渡哲也
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★★★

川崎を縄張りにしていた郷田組が、関東連合会の策略によってその傘下に組み込まれてしまう。郷田組に身を寄せていた庄司(渡哲也)は、所属していた組を関東連合会に壊滅させられた過去を持っていた。関東連合会は郷田組に対して無茶な要求をしてくる。色々あって庄司は郷田組の若者頭・花井(郷英治)と結託し……。

任侠映画。こうやってやくざの「仁義なき戦い」を描くことは、結果的に当時の若者(団塊の世代)への啓蒙になっていたのだろう。要は、集団就職に失敗したからといって安易に極道の道に入ってはいけない、ということだ。鉄砲玉連中なんかみんなしょうもない理由で命を散らしている。これを見てやくざに憧れるとかまずないわけで、任侠映画って意外と倫理的なのかもしれない。

やくざの世界も弱肉強食で、弱い組は強い組に力づくで併合されてしまう。しかし、これは一般の企業だって同じことだ。現代日本でも、経営が弱体化した企業は中国や台湾の企業にことごとく買収されている。我々はそういう厳しさを肌身に感じているから、関東連合会の仕掛けに対して「やくざの世界もカビ生えた」などと泣き言をほざくご隠居(中村竹弥)に面食らってしまうのだ。お前、カルテルのつもりだったのかよ、と。暴力で生きている人たちが仲良く縄張りを分け合っているほうがおかしいわけで、現実のやくざももっと抗争を繰り広げてほしいと思う。

関東連合会が郷田組に対して無茶苦茶な要求をしていて、ここまで犠牲を強いているのは相手の忍耐を試しているようにしか見えない。端的に言って、圧力のかけすぎである。あまり追い詰めるといつか爆発して痛い目を見るだろうと危惧するのだけど、そんなことなどお構いなしに郷田組を踏みにじっている。案の定、終盤では庄司たちが決死の斬り込みをかけて関東連合会の会長(小堀明男)を刺殺しているわけで、まさに「窮鼠猫を噛む」を地で行くストーリーだった。

本作の大きな特徴は、やくざを題材にしているのに銃が出てこないところだ。殺しも斬り込みもみんな刃物で行っている。終盤の大立ち回りは多勢に無勢とは思うものの、刃物ゆえに殺陣が成立していて時代劇を見ているような気分になる。やくざたちのドスアクションを堪能した。

港に殴り込みに行く車内で「男になるんだよ!」と発破をかけるあたり、ホモソーシャル集団の面目躍如といった感じである。鉄砲玉連中が女を輪姦しているのも同様だ。面白いのは、劇を通じてこの鉄砲玉連中が一人ずつ討ち死にして全滅するところで、これによって因果応報が成されている*1。悪いことをした人間はたとえ「こちら側」でも死ななければならない。この映画、とても倫理的だ。

*1:実は一人だけ輪姦に加わってないのがいるが、彼も仲間を止めなかったという意味では同罪である。