海外文学読書録

書評と感想

『アンナチュラル』(2018)

★★

UDIラボ(不自然死究明研究所)で法医解剖医を務める三澄ミコト(石原さとみ)は、一家心中事件の生き残りだった。また、同じ法医解剖医の中堂系(井浦新)は、8年前に恋人を何者かに殺されている。ラボには臨床検査技師の東海林夕子(市川実日子)、記録員の久部六郎(窪田正孝)、所長の神倉保夫(松重豊)が詰めており、日々不自然死の死因究明をしていた。

全10話。

法医学ミステリ。5話までは科学的裏付けに基づいた捜査手法が珍しくて面白かったけれど、慣れてからはありきたりな作劇に食傷してしまった。登場人物の戯画化は目を覆うほどだし、ミステリ部分はご都合主義が多いし、見ていてストレスを感じたことは否めない。また、本作のテーマは「倫理と感情に挟まれた場合、法医解剖医はどうすべきか」というものだけど、無論そんなもの答えは決まっているわけで、やっていることは既存の価値観の再確認でしかなかった。野木亜紀子の脚本だったら、『逃げ恥』のほうがよっぽど斬新だろう。今回は幼稚さが鼻についた。

良かったのは各話ごとのピークの持っていき方で、どの回も主題歌をかけるタイミングが絶妙だった。米津玄師の「Lemon」【Amazon】がまたいい曲なのである。主題歌がかかると否が応でもせつなくなる。ここだけは文句のつけようがなかった。

本作は徹底して被害者に寄り添っているところがポイントで、法医学とはあくまで死因究明からの正義の執行であることが強調されている。古典的なミステリの場合、被害者の人生よりも犯人の動機に注目が行きがちだけど、本作はそれのアンチテーゼをやっているのだ。犯人が何を考えているかなんてどうでもいい。どんなバッググラウンドを持っていようが粛々と法で裁くだけだ。このようにワイドショー的な「心の闇」をそっちのけにしているところが特徴で、振り返ってみればPCなドラマだったと思う。

第1話ではMERSコロナウイルスを扱っている。これが最近話題になったCOVID-19の武漢研究所起源説を先取りしていてすごかった。新型コロナが流行る2年前なのだから神がかっている。また、個人的にピークの持っていき方が好きなのが第6話で、ここではミコトと東海林の友情が描かれている。普段からバカ話をしている2人は、互いに相手のことを「友達じゃない。ただの同僚」と嘯いていた。ところが、これは照れ隠しなのである。実際、我々は友達のことを面と向かって友達とは呼ばないわけで、この回では人間関係の機微を表現している。

第9話と第10話は連続殺人犯をめぐる話だけど、事件の解決方法がご都合主義で萎えた。8年前の遺体がテネシー州で土葬? 最近のミステリだってここまで酷くはないだろう。