海外文学読書録

書評と感想

ジェームズ・ワン『アクアマン』(2018/米)

★★★

人間の父とアトランティンス人の母から生まれたアーサー(ジェイソン・モモア)は、超人的な能力で海の平和を守っていた。ところが、アーサーの異父弟にしてアトランティンス帝国の王オーム(パトリック・ウィルソン)が、地上人に戦争を仕掛けようとする。アーサーは海底国ゼベルの王女メラ(アンバー・ハード)と出会い、オームの野望を阻止すべく行動を共にする。

海底版『スター・ウォーズ』【Amazon】といったところだろうか。当然のごとくCGが満載だけど、映像が『ファイナルファンタジー』【Amazon】や『モンスターハンター』【Amazon】みたいなのには驚いた。これは映画がゲームに影響を与え、今度はその逆流現象が起きているということだろう。アクションもカメラワークや立ち回りがゲームっぽい。現代人がどういうコンテンツを好んでいるのかよく分かった。

ヒーローものの醍醐味はCGを駆使した超人的アクションにある。本作はその点において及第点だった。昔の牧歌的アクションに比べるととにかく派手で、人間離れした動きを軽快なテンポで見せてくれる。バトルに関しては概ね想定内ではあるけれど、通常の障害物競走的なアクションは新鮮で見応えがある。同じアクション映画でも、MIシリーズや007シリーズはあくまで人間レベルだから、本作みたいな超人的アクションはすこぶる刺激的だ。こういう映画が好きな人の気持ちも何となく理解できる。

人間とアトランティンス人のハーフであるアーサーは、陸と海の架け橋になる存在だ。だからこそ戦争を止める役として最適である。そして、物語の終盤では彼がアトランティンス帝国の真の王として認められるのだった。このように純粋な血統を否定し、混血児を王にする筋立ては、移民の坩堝と化したアメリカの現状を反映しているのだろう。つまり、異人種間での結婚こそがPCなのだ。そりゃまあ、今どき「純粋な白人こそが尊い」みたいなことをやられたらどん引きなので、本作の設定は極めて現代的である。価値観がアップデートされている。日本人の僕としては、こういうところがアメリカらしくて面白い。

本作がアーサー王物語【Amazon】を下敷きにしていることは、岩に突き刺さったトライデントを抜くまで気づかなかった。だから主人公の名前がアーサーだったのだ。これはちょっと油断していた。

全体的に映像は綺麗だけど、海底を中心にCGが薄っぺらくてそこが不満だった。たぶん、ファンタスティックな世界を迫力のある映像で作るのは難しいのだろう。良くも悪くもゲームっぽい映像だった。