海外文学読書録

書評と感想

ヤン・シュヴァンクマイエル『アリス』(1988/チェコスロバキア)

アリス

アリス

  • メディア: Prime Video
 

★★★

散らかった部屋の中で遊んでいたアリス(クリスティーナ・コホドヴァ)。突然、ガラスケースの中に入っていた剥製のウサギが動き出した。それを追いかけるアリスは机の引き出しに吸い込まれ、不思議の国へ迷い込む。インクを飲んで小さくなったり、クッキーを食べて大きくなったりしながら冒険する。

元ネタは『不思議の国のアリス』【Amazon】。

実写を絡ませたストップモーションアニメである。現時点における最新のストップモーションアニメは『PUI PUI モルカー』【Amazon】だと思うが、それに比べるとだいぶ動きが荒かった。ただ、『モルカー』は3分アニメだからこそ成立する動きなので、80分の本作と比べるのは酷だろう。外国の、それも東欧のストップモーションアニメは美術が独特なので、とりあえず見て損はしなかった。

古いCGの映画はだいたい鑑賞に堪えないけれど、古いストップモーションアニメは小道具に味があってそれなりに目を引く。作家性の強いアーティスティックな世界観は、アナログがデジタルに勝っている唯一の部分ではないか。おそらく、やる気になればCGでもストップモーションアニメみたいな映像は作れるのだろう。しかし、現在のところは後者が命脈を保っている。そう考えると、このジャンルもまだまだ置き換えが利かないのだと思う。

印象的だったシーンを挙げていく。ネズミがアリスの頭を島に見立てて陣取り、料理を作るシーン。家に立て籠もったアリスと外にいるウサギたちが攻防するシーン。帽子屋と三月兎が機械のように同じ動作を反復するシーン。靴下のイモ虫が就寝すべく自分のまぶたを糸で縫うシーン。あと、ウサギの体におがくずみたいなのが詰まっていて、体の一部が裂けてそれが漏れ出るところも奇妙だった。漏れ出た分は口からおがくずを食べて補給している。

アリスがインキを飲んだりクッキーを食べたりするのはいかにも子供の好奇心という感じだ。分別のついた大人だったらまずしないだろう。なぜなら毒が入ってるかもしれないから。しかし、そういった危うさが本作をスリリングにしているところも否めない。