海外文学読書録

書評と感想

是枝裕和『海街diary』(2015/日)

★★★

鎌倉。幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)の三姉妹は15年前に父に捨てられ、母(大竹しのぶ)にも家出をされて3人暮らしをしていた。ある日、父の訃報が届いたため、姉妹は葬儀に出席すべく山形へ行く。父は当地で再婚しており、中学生になる娘すず(広瀬すず)を残していた。姉妹はすずを鎌倉の邸宅に引き取り、4人で共同生活をする。

原作は吉田秋生の同名漫画【Amazon】。

みんなそれぞれ悩みなり葛藤なりを抱えているのだけど、本作はそういうのをあっさりと流していて、この辺は日本映画の慎ましさなのだろう。けっこう酷い状況にもかかわらず、誰も取り乱したりギャーギャー喚いたりしない(せいぜい山でバカヤローと叫ぶ程度)。21世紀の現代にあっては修羅場は受けないのだ。本作は良くも悪くも大人な内容で、さざ波が立つ静かな海辺のような映画だった。

3姉妹が腹違いの妹を引き取って4人で共同生活するところが良かった。次女が自宅のことを「女子寮」と紹介していたけれど、確かにこの楽しさは最近流行りのシェアハウスに通じるものがある。自然あふれる古民家に4人の美しき姉妹。とりわけ最高なのが縁側で姉妹が梅の仕込みをするシーンで、こういう生活が永遠に続けばいいのにと思った。

夫婦や恋人は簡単に切れる。しかし、親子はなかなか切れない。そういう主張が本作を貫いている。死んだ父は浮気をして家族を捨てたわりに憎まれてない。その源泉には彼が「やさしい人」であることが挙げられており、人柄が良ければ罪が帳消しになる世界観には感動を禁じ得なかった。また、大竹しのぶ演じる母親も最初は厄介者として登場したものの、姉妹と別れるときはすっかりしおらしくなっている。この映画に悪人は登場しない。ただ己の内側に悩みを抱える者がいるのみである。子供でさえも成熟した態度をとっているのは薄気味悪いけれど、しかしそれこそが映画という人工物なわけで、本作は醜い事実を突きつけるよりも、美しい幻想を切り取ることに重きを置いている。これも映画というメディアのひとつのあり方だろう。

鎌倉のほどほどに田舎な風景がいい。食堂やスポーツ用品店といった個人商店が地域に根付いており、地元の人たちが温かい交流をしている。本作はコンビニやファミレスといったチェーン店は頑なに映さない。下町のような親しみやすい風景を描写することに徹しており、最近の映画なのに妙なノスタルジーを感じさせる。

広瀬すずが可愛いのも特筆すべき点だ。当時17歳。若い。