海外文学読書録

書評と感想

ジーン・ネグレスコ『百万長者と結婚する方法』(1953/米)

★★★

ニューヨーク。バツイチのシャッツィ(ローレン・バコール)は、金持ちと結婚すべく曰くつきの高級アパートを借りる。そこにモデル仲間のポーラ(マリリン・モンロー)とロコ(ベティ・グレイブル)が集まり、3人は婚活に奔走するのだった。やがてその努力が実り、3人は金持ちが集まるパーティーに参加する。

婚活を扱ったロマンティック・コメディ。今も昔も女性は上昇婚を目指していて、こういうのは100年後も変わらないのだろうと嘆息した。思えば、19世紀に発表されたジェイン・オースティンの小説群でも、男性は所有する資産によって価値を測られている。女性が抱くこの結婚観はそう簡単には覆らない。上昇婚とはもはや本能であり、フェミニズムで殴ってもどうにもならないのだと思う。

見ていて感心したのは、この3人の女たち、相手が金持ちならそれ以外のマイナス要素は一切不問にしているところだ。老人だろうが、隻眼だろうが、妻帯者だろうが気にしない。金さえ持っていれば、結婚相手として不足はないと目している。そこは現代の婚活女子と大きく違っていて、高望みはしないのだった。だいたい今どきの婚活女子って、高学歴・高収入・高身長は当たり前、そのうえ若くてイケメンで家事育児は手伝ってくれる、自分の趣味には口を出さない、働かなくても文句は言わないなど、要求が多すぎるのである。その結果、中年になっても結婚できない行き遅れが大量に発生している。そもそも結婚とは妥協であり、譲れないポイントだけ押さえたら後は我慢するしかないのだ。その点、シャッツィたちは「金持ち」という一点集中型の婚活をしているため、見ていて潔さを感じる。結婚相手には多くを求めない。現代の婚活女子も見習うべきだろう。

3人の中では、シャッツィを演じたローレン・バコールが一番魅力的だった。あのマリリン・モンローが霞んで見えるほどである。さらに、ベティ・グレイブルに至ってはもはや空気と化していた。当時のローレン・バコールは29歳だけど、既にお局様みたいな貫禄がある。見ていてバブみを感じたことを告白しておこう。本作はローレン・バコールを愛でる映画だと言える。

3人とも、当初目をつけていた相手とは別の人物とくっつくのはお約束だろう。中でもトム・ブルックマン(キャメロン・ミッチェル)の役回りが面白くて、金持ちの老人を振ったシャッツィが、トムと結ばれるのはまるでフェアリーテイルだった。給油所の店員かと思いきや……みたいなご都合主義。どうせだったらトムは給油所の店員であってほしかったけれど、そこは婚活映画、見る者に夢を与えている。