海外文学読書録

書評と感想

ルイジ・コメンチーニ『ブーベの恋人』(1963/仏=伊)

★★★★

1944年のイタリア。田舎町に住むマーラ(クラウディア・カルディナーレ)の家にブーベ(ジョージ・チャキリス)という青年がやってくる。彼はパルチザンの闘士で、マーラの父にある報告をしにやってきた。その後、マーラとブーベは婚約するも、ブーベが殺人を犯してお尋ね者になって行方をくらます。やがてマーラはステファーノ(マルク・ミシェル)と出会い、彼と恋仲になるのだった。

原作はカルロ・カッソーラの同名小説【Amazon】。

昔の日本映画みたいだった。本作のジョージ・チャキリスは、高倉健が演じてそうな役回りである。古いジェンダー観も含めて日本っぽいと思った。

戦後の混乱期を舞台にしたベタベタのロマンスだけど、マーラの揺れる女心がしっかり描かれていて、意外にも退屈しなかった。イタリアのパルチザンって日本だと任侠に相当すると思う。つまり、どちらも官憲から追われる日陰者。特に若いブーベは鉄砲玉みたいなポジションで、やはり高倉健を連想させる。で、そんなブーベは逮捕されて監獄に入ってしまうわけだ。その頃にはマーラも新しい恋人(ステファーノ)ができていて、彼から結婚を迫られる。マーラはブーベとステファーノ、どちらを選ぶのか? 本作はこの決定の過程で二転三転しているのだから面白い。ロマンスにあまり興味のない僕でも最後まで観れた。

傍から見るとマーラの選択は合理性を欠いてるのだけど、恋愛とはしばしば理屈を超えるものなのだろう。ブーベが出所する7年後、マーラは34歳になっている。それまで2人は一緒に過ごすことができない。2週間に一度、刑務所でわずかな時間面会するのみである。これだったらステファーノと結婚したほうが良かったのではなかろうか。娑婆と刑務所の恋愛とは究極の遠距離恋愛で、若い女がこれをこなすのは拷問だ。貴重な20代を無為に消費していいのか? と心配してしまう。実際、久しぶりに再会したステファーノは別の女と結婚していたわけで、マーラの非合理的な純粋さが際立つのだった。僕からしたら、マーラとブーベの関係はグロテスクである。しかし、本作はそれを純愛風に見せかけているのだから、随分と悪質ではないかと呆れた。

序盤でブーベにプレゼントされたヘビ皮のハイヒール。さらに、ブーベから貰ったシルクで作ったワンピース。これらが終盤で何らかの意味を持つのかと思ったら、特に何もなくて拍子抜けした。実のところ、ハイヒールもワンピースも伏線だろうと勘繰っていたのである。どうも僕は劇中でシンボリックな小道具が出てくると、それに過剰な意味を見出してしまうみたいだ。悪い癖なので直したい。

60年代にもなるとモノクロ映像も洗練されていて、本作はその映像美が目に心地良かった。主演のクラウディア・カルディナーレも美しく撮られている。