海外文学読書録

書評と感想

ジョン・フォード『コレヒドール戦記』(1945/米)

★★★

日本軍による真珠湾攻撃によって戦争の幕が開けた。フィリピンに駐留する第3哨戒魚雷艇隊はブルックリー大尉(ロバート・モンゴメリー)が率いており、副官にはライアン中尉(ジョン・ウェイン)がついていた。そこへ日本の爆撃機が襲来、ライアン中尉が負傷してまう。彼は意に反して病院送りになり、看護兵のサンディ(ドナ・リード)と恋に落ちる。やがて戦局は悪化し……。

原作はウィリアム・L・ホワイトの『They Were Expendable』【Amazon】。

負け戦を題材にしているせいか、この時期の戦争映画にしては珍しく景気が悪かった。本作は結局、主人公たちが陥落寸前のフィリピンから去り、「We Shall Return.」で締められるのだ。まさに「俺たちの戦いはこれからだ」エンドである。戦勝の浮かれ騒ぎを題材にしなかったのは意外で、ジョン・フォードの奥深さを垣間見たような気がする。

戦後間もない映画なので、男のヒロイズムが主題になっていることは間違いない。戦争の英雄たちを格好良く描こうという態度が見て取れる。といっても、戦場でドンパチするシーンは予想以上に少ない。前線からやや離れた場所における、室内劇と野外劇が中心である。この辺は予算の都合だったり時間の都合だったりがあるのだろう。『ザ・パシフィック』みたいな骨太の戦争映画を期待すると肩透かしを食う。

戦闘シーンは少ないながらも頑張っていて、砲弾が空中で爆発したり、爆撃で激しく水しぶきが上がったり、昔の映画のわりには力が入っていた。特に日本軍の巡洋艦が炎上する絵面には迫力がある。魚雷艇は小さいから敵の砲弾が命中しづらいし、小回りが効くから的を絞らせることもない。大きい船と戦うのに向いているのだ。この事実は軍事に無知な僕からしたら目から鱗で、戦争映画もなかなか勉強になるものだと感心した。映像によってひと目で分からせるところがいい。

本作は男のヒロイズムに焦点を当てている。しかし、そこへ男女のロマンスをぶち込んでくるあたり、さすがハリウッド映画という感じだった。たとえば、戦場で女性看護兵を交えて食事会をするなんて、日本軍では絶対にあり得ないだろう。ただ、惜しむらくはこのロマンスが消化不良なところで、結局はヒロイズムの添え物にしかなってないのだからずっこける。そこは古き良きハリウッドの文法からずれていて収まりが悪かった。