海外文学読書録

書評と感想

アラン・ロブ=グリエ『エデン、その後』(1970/仏=チェコスロバキア=チュニジア)

エデン、その後 [DVD]

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★★★

ヴァイオレット(カトリーヌ・ジュールダン)たち大学生がカフェ・エデンに集まり、ロシアンルーレットや薬物摂取ごっこなど、退廃的な遊びに興じている。そこへ謎の男(ピエール・ジメール)が登場。ヴァイオレットに白い粉を舐めさせる。彼女は幻覚に襲われるのだった。その後、ヴァイオレットは工場に迷い込み、運河で男の死体を発見する。

非常に演劇的な映画で、一歩間違えたら学生の自主制作映画になりかねないのだけど、そこは撮影がしっかりしていてプロの映画に仕上がっていた。冒頭から断片的に単語を羅列していくところからしてただものではない。そして、俳優は俳優で人形のような佇まいをしており、彼らが無機質な演技をしつつ、突拍子もない絵面を見せている。エデンで学生たちがやっていることは、どこか「死」を弄んでいるような感じだけど、チュニジアに舞台が移ってからは明確に殺人が描かれていて、「生」と「死」の狭間にある演劇的・遊戯的な現実を表現している。もちろん、例によって本作は虚実が入り混じっていて、どれが現実でどれが幻想なのか判然としない。合間合間に幻影的なイメージが挿入され、観るものを撹乱している。エデンから工場を経てチュニジアに至る冒険は、それ自体が壮大な演劇のようであり、本作は一筋縄ではいかない映画だった。

ロブ=グリエ監督の映画は本作からカラー映像になったけれど、やはりと言うべきか、色を明確にした構図になっている。チュニジアが舞台に選ばれたのは、そこらにある建物が白いからだろう。それはキャンパスのようであり、白い背景に赤や青といった原色が塗りたくられている(女性の裸体も白地に映えている)。途中から絵画(タブロー)がマクガフィンになっているのもおそらく偶然ではない。カラーになることで絵画のような色使いを意識したと思われる。

血の赤こそがリアルなのだ、と言いたげなくらい本作には血が出てくる。でも、よく見るとその血はペンキみたいな色をしていて、あまりリアルではない。作り物であることは明白である。エデンでの倦怠から端を発したリアルも、結局は演劇に回収されるということだろうか。エデンから始まってエデンに還る構成が、その説を補強しているように思える。ともあれ、この監督の映画は前衛的でありながらも、一作一作やってることが違っていて面白い。