海外文学読書録

書評と感想

2019年に読んだ231冊から星5の15冊を紹介

このブログでは原則的に海外文学しか扱ってないが、実は日本文学やノンフィクションも陰でそこそこ読んでおり、それらを読書メーターに登録している。 今回、2019年に読んだすべての本から、最高点(星5)を付けた本をピックアップすることにした。読書の参考にしてもらえれば幸いである。

評価の目安は以下の通り。

  • ★★★★★---超面白い
  • ★★★★---面白い
  • ★★★---普通
  • ★★---厳しい
  • ★---超厳しい

 

19世紀は小説の黄金時代だったが、その精華と言えるのが本作だろう。19世紀大衆小説の頂点である。内容は復讐もので、謀略によって監獄に収監された青年が14年後に脱獄、財宝を手に入れて大金持ちになり、モンテ・クリスト伯を名乗って自分を陥れた者たちに復讐する。本作は文庫本7冊にわたる大長編だが、やたらと構築的なところが特徴で、終盤の復讐劇に向けて着々と段取りを整えている。そして、終盤で解放される面白さときたら筆舌に尽くしがたいほどだ。手の込んだドラマの数々に、元婚約者との運命の再会。物語に大きなうねりがあって、小説を読む快楽が味わえる。

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なお、映画『オールド・ボーイ』【Amazon】は本作に捻りを加えたプロットでとても面白い。本作が気に入ったら観ることをお勧めする。

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鬱病について様々な観点から掘り下げた本で、全米図書賞のノンフィクション部門を受賞している。これは受賞するのも納得の力作だった。まず著者自身が鬱病なのだが、その個人的な体験を起点に、専門家の知見やフィールドワーク、膨大な資料の調査を行っており、基本的な情報から代替療法まで、さらには依存症と自殺の問題から、西洋における鬱病の歴史まで、鬱病に関するトピックを網羅している。鬱病についての本ならまずこれを読めという感じだ。よくこんなに広くて深い内容の本を書けたものだと感心する。鬱病について、これ以上の本は未だに出版されていないのではなかろうか?

実は以下の記事を書くために読んだ本だったが、結果的には思わぬ拾い物だった。

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本作は戦争文学でもあり風刺文学でもあり、その他様々な要素がごった煮的に混じった怪物的小説だった。全5巻の大長編である。特徴的なのが論理的細部への徹底した拘りで、主人公の東堂二等兵は軍隊の不条理な命令に対し、幾度となく軍規を参照してその誤りを明らかにしている。とにかく理屈っぽいところが本作の読みどころだろう。論理的細部を追求する姿勢はもはや執念と言っていい。また、軍隊の慣習から日本の文化まで、インテリならではの考察が目白押しで圧倒される。本作は日本文学の枠組みに収まらない、世界水準の小説を読みたい人にお勧め。

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