海外文学読書録

書評と感想

ティム・バートン『バットマン リターンズ』(1992/米)

★★★★

クリスマスのゴッサム・シティ。奇形が原因で両親から捨てられたペンギン(ダニー・デヴィート)は、サーカス党を率いて街を荒らし回っていた。そんなペンギンを名士シュレッククリストファー・ウォーケン)が支援し、己の野望に利用する。一方、シュレックの秘書セリーナ(ミシェル・ファイファー)は、雇い主の秘密を知ったことでビルから突き落とされる。彼女はキャットウーマンとして生まれ変わるのだった。そんな状況のなか、バットマンマイケル・キートン)が平和のために奔走する。

『バットマン』の続編。

フリークス趣味が全開で面白かった。悪役が複数いるせいか、前作よりもエンタメ度が上がっている。存在感という意味では、ペンギン一人ではジョーカーに及ばないものの、そこにキャットウーマンシュレックが加わることで、あの濃いキャラクターを乗り越えていた。やはり悪役は複数に限る。

ペンギンの面白いところは、奇形が原因で両親に捨てられたトラウマから、「一人の人間として尊敬されたい」と願っているところだ。あれだけ無茶苦茶やっておいてそりゃないだろとは思うのだけど、奇形ゆえに、また捨て子ゆえにねじ曲がったというストーリーはそれなりに納得いくものがある。そんなペンギンも念願叶って名前を手に入れ、大衆から一人の人間として認知される。けれども、終盤であっさりそれを捨てているのだから救いようがない。結局、フリークスはフリークスとして生きていくしかないのだ。『バットマン』シリーズの魅力って、こういう日陰者にスポットを当てているところだと思う。悪役でもただの悪というわけではない。そこには悲しみが潜んでいる。

キャットウーマンバットマンと対立するものの、ペンギンのような悪役ではなく、ヒロインとフリークスの間を行き来する複雑なキャラだ。バットマン、ペンギン、キャットウーマンと、3人がそれぞれ独自の動きをしているのだから目が離せない。そして、バットマンキャットウーマンには類似性があって、それはどちらも二面性を抱えているところだ。つまり、彼らは表の顔と裏の顔を持っている。終盤でバットマンが、「人格が2つに引き裂かれている」と告白して仮面を脱ぐところが本作のハイライトで、彼もフリークスに近い存在だったことが明らかになる。なるほど、そりゃそうだ。コスプレして自警団ヒーローする奴がまともなわけない。このシーンを見て、みんな病んでいると腑に落ちた。

キャットウーマンのコスチューム姿が最高で、ボンデージを着た女性はセクシーにも程があると思った。僕もああいう女性に鞭打たれたい。