海外文学読書録

書評と感想

クリス・コロンバス『ピクセル』(2015/米)

★★★

2015年。グアムのアメリカ軍基地が宇宙人によって攻撃され、ピクセルとなって崩壊する。攻撃したのは『ギャラガ』のキャラだった。かつてNASAは1982年当時に流行したゲームの映像を宇宙へ打ち上げており、それを受信した宇宙人が宣戦布告と勘違いして攻撃してきている。サム・ブレナー(アダム・サンドラー)たち中年ナードが、少年時代に鍛えたゲームの腕前を武器に立ち向かう。

インデペンデンス・デイ』【Amazon】のナード版と言えば分かりやすいだろうか。ゲームの腕前なんて実生活では何の役にも立たないけれど、それが世界を救う武器になるところがおたく心を刺激する。しかも、現代のeスポーツみたいな華々しいゲームではなく、『パックマン』や『ドンキーコング』といったレトロゲームが主体なのだから面白い。個人的には、生まれ育った年代が違うので、本作の懐古趣味は心に響かなかった。けれども、80年代に少年時代を送った人ならはまると思う。僕は観ていて分からないネタが多かった。

ゲームをリアル世界でやるところは『風雲!たけし城』【Amazon】っぽいかもしれない。あれをCGやら何やらといった最新の映像技術で立体化している。ライトキャノンでクリーチャーを倒したり、車を運転してパックマンを追い詰めたり、そういうアクションがしょぼく見えないところは特筆すべきだろう。映像面では人や建物がピクセルになって分解されるところが爽快で、あのカタストロフは永遠に見ていたいほどだった。いやはや、最近のCGってすごい。

ところで、同じレトロゲーム趣味でも、日本では『ハイスコアガール』というラブコメが生まれ、アメリカでは本作みたいなSF作品が生まれているのだから、文化の違いとは面白いものである。僕はどちらかというと『ハイスコアガール』のほうに世代が近いので、あの作品には感情移入しまくりである。おまけにラブコメとしても一級品だから目が離せない。10月から第2期が始まるので、今から見るのを楽しみにしている*1

俳優ではジョシュ・ギャッド演じるワンダーキッドのナード臭がすごかった。さらに、ピーター・ディンクレイジ演じるファイアーブラスターもキチガイじみていて強烈。全体的にナードのおじさんたちが可愛く見えたので、本作はKKO(キモくて金のないおっさん)を愛でる映画と言えるかもしれない。

*1:この記事を書いてるのは2019年9月12日である。