海外文学読書録

書評と感想

ロバート・ルケティック『キューティ・ブロンド』(2001/米)

★★★

ファッションと美容に力を入れているブロンド女性エル・ウッズ(リース・ウィザースプーン)は、ロサンゼルス市立大学の卒業を間近に控えていた。そんなとき、彼氏のワーナー(マシュー・デイヴィス)から「ブロンド女は議員の妻にふさわしくない」と言われ振られてしまう。ワーナーがハーバード大学ロースクールに進学すると知ったエルは、自分もそこを目指すことに。見事合格して入学を果たす。

ピンクのスーツを身にまとい、日々のマニキュア・ペディキュアを欠かさない。そんなスクールカーストの高そうなブロンド女が、ハーバード大学ロースクールに進学する。これって日本でたとえると、ギャルが東大文科一類に進学するようなものだろう。つまり、アメリカ版ビリギャル【Amazon】だ。いや、ビリギャル知らんけど。ともあれ、「人は見た目じゃない」というメッセージを投げかけていて、多様性とはこういうものなのかと目をみはった。

アメリカ人はブロンド巨乳女が好きだと思っていたけれど、どうやら違うみたいだ。エルの彼氏は、マリリン・モンローみたいな女は政治家の妻にできない、とのたまっている。僕はこれを聞いて驚いた。『紳士は金髪がお好き』【Amazon】ではないのか。それにマリリン・モンロージョン・F・ケネディの愛人だったではないか。それともあれか、ブロンド巨乳女はあくまでセックスシンボルであり、中身は空っぽのパープリンと見做されているのだろうか。日本人の僕には背景がよく分からない。ただ、この見方が正しいのなら、本作は半世紀ぶりにセクシー・ブロンドを復権させた野心作と言えるだろう。

エル・ウッズは明らかにマリリン・モンローを意識した造形になっていて、とにかく派手な外見をしている。ピンクやらパープルやら、場面場面で変わる彼女のファッションは見ているだけでも楽しい。ハーバード大学では一人だけ目立っていて、学生から「どこのバービー人形だ」と言われている。授業で使うPCも一人だけお洒落なiBook。リンゴのマークが輝いている(現代だとMacBookAmazon】に相当するだろう)。基本的にはトントン拍子に物事が進んでいくサクセスストーリーだけど、途中、女というだけで教授に口説かれ、拒否したら「弁護士は諦めろ」と恫喝されていて、ハーバードに来ても見た目で判断されている。ブロンド巨乳女はあくまで性的対象にすぎないのだ。しかし本作は、そんな彼女を重要な裁判で活躍させ、ロースクールを首席で卒業させることで偏見を覆してみせる。人は見た目ではないと主張している。まさに今日的なPC映画と言えよう。

ただ、エルの活躍はあまりに出来すぎだし、終わってみればハリウッドのテンプレ映画といった感じで、もう少し捻りが欲しかった。