海外文学読書録

書評と感想

舛田利雄『二百三高地』(1980/日)

二百三高地 [Blu-ray]

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1904年、日露戦争が勃発。乃木希典仲代達矢)が旅順要塞攻略の司令官に任命される。ヨーロッパからバルチック艦隊が到着する前に要塞を陥落させる必要があったが、ロシア軍の防備が固くて作戦は困難を極める。大本営では乃木の更迭が取り沙汰されるも、明治天皇三船敏郎)はそれを拒否するのだった。やがて作戦は二百三高地の占領に絞られる。

まるで民放のテレビドラマみたいだった。NHK大河ドラマよりも映像作品として迫力がなく、なぜ大金を投じたのにこの程度なのか疑問に思う。そもそも、当時の日本の大作映画ってどれも駄目では。同じ年に公開された『影武者』【Amazon】も、金がかかってるわりにはやたらと間延びしたエセ芸術映画だったし。

昔の映画のわりに映像が安っぽいのはどうかと思う。そのせいで登場人物にコスプレ感がある。明治の人という感じがまったくしない。だいたい昔の映画って映像に味があって然るべきなのに、本作は現代の学芸会ドラマと大差がなく、良くも悪くもテレビ畑の作品といった趣である。先に貶した『影武者』は、何だかんだ言って映像だけは良かったので、これは時代の問題というわけではなさそうだ。なぜ本作だけこうなったのだろう? 僕には見当もつかない。

3時間の長尺を支えるには脚本が脆弱で、下っ端の人情話や上層部の会議など、カットすべき部分がたくさんある。とにかくつまらないエピソードが多すぎた。戦争映画の主役は派手なドンパチなので、その快楽を削ぐようなドラマは極力排除すべきだろう。その点、最近観た『バンド・オブ・ブラザース』は、優れた戦争ドラマだった。映像作品における脚本の重要性がよく分かる。

全体の半分くらいでさだまさしの歌【Amazon】が挿入されるのだけど、これがまた場違いな演出で、昭和のテレビドラマ感を醸し出してた。画面いっぱいに歌詞がでかでかと表示されるのはさすがにあかんと思う。急に映像がフェードアウトして、黒地に黄色の文字で歌詞だけが表示されたのにはまいった。この時点で視聴を断念しようか迷ったほどだ。

ロシア人の捕虜が生意気な口を利いたため、通訳していた日本軍の中尉が彼を拳銃で射殺しようとしている。中尉によると、ロシア人によって多くの部下が殺されたのに、人道的な扱いをしているのは納得がいかないのだという。それはそれでひとつの立場だけど、しかし、こういうエピソードをヒロイックに描いていたのには面食らった。僕はむしろ、国際法を守っている日本の上層部に感心していたので。これは太平洋戦争とは違う。武士道精神がまだ生きている。そんな風に感心していた。このエピソードはさすがに時代錯誤の感が否めない。

良かった部分も挙げておこう。雨の中、袋に入った飯を兵士たちが群がって食べるシーン。ご飯の中に赤い色が混ざっていて、五目飯だろうと思ってたら血だった。これには戦争の無情さを感じる。それともうひとつ、瀕死のロシア兵に水を飲ませてやるシーン。水を飲ませた日本兵が相手に拳銃で射殺されてしまった。温情が仇になったのだ。この2つはとても印象に残っている。