★★★
プラハのアメリカ大使館でCIAの工作員リスト「NOC」が盗まれようとしていた。それを防ぐため、IMF工作員のジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)に指令が下る。イーサン・ハント(トム・クルーズ)らが作戦に従事するが、チームはイーサン以外全滅してしまう。そして、イーサンに裏切り者の疑惑がかけられるのだった。やがてチームメンバーだったクレア・フェルペス(エマニュエル・ベアール)も生き残っていることが判明。裏切り者を探すべく、新たなチームを組んでCIA本部へ潜入する。
所々に昔ながらのスパイ映画っぽいギミックがあって楽しかった。「テープは5秒後に消滅する」とか、眼鏡に監視カメラが仕込まれてるとか、爆発するガムみたいな物体とか。極めつけは変装用のマスクで、まるで『ルパン三世』【Amazon】のように精巧だった。これってCGと特殊メイクの合わせ技なのだろうか? あと、CIA本部からNOCを盗み出す場面も『ルパン三世』みたいで、ひょっとしたら元ネタが同じなのかもしれない。ルパンたちもよく厳重なセキュリティの部屋からお宝を盗んでいた。
CIA本部のコンピュータールームがよくできた造形で、一面の白い空間は宇宙船を彷彿とさせるものだった。ここの静謐さが実に素晴らしく、ロープで宙吊りになったトム・クルーズが曲芸師みたいな体勢でPCから情報を盗む、その一連の動きに緊張感があった。この部分、特に汗が床に落ちそうになるところが最高潮だろう。個人的には、爆風が荒れ狂う派手なアクションよりも、こういう緻密なミッションのほうが好みである。
裏切り者の正体については、序盤の橋のシーンで察しがつくけれど、もう一人共犯がいたのは予想外だった。ただひとつ謎なのは、終盤で裏切り者がイーサンを射殺しなかったことだ。自分の邪魔をした共犯はあっさり殺したのに、なぜかイーサンのことは殴っただけで済ませている。おかげで裏切り者はイーサンに逃亡を阻止され、敢えない最後を遂げたのだった。これは作劇上の都合というか、イーサンに主人公補正が働いた結果なのだろう。ただそれにしても、裏切り者は詰めが甘かったと言わざるを得ない。
水槽が爆発して水が溢れ出るのをスローモーションで見せたり、ここぞというところで主観視点を入れたり、映像面で監督の作家性が感じられた。あと、ディスクがMOだったのが懐かしい。当時は最先端のメディアだった。それと、電話の逆探知に時間がかかるのもこの時代ならではだろう。今は自動的に通話記録が残る。思えば、90年代はアナログからデジタルへの移行期だった。