★★★
1870年のアリゾナ州。金鉱を探しに来たトム(ジェームズ・スチュワート)が、傷ついたアパッチの少年を助ける。酋長のコチーズ(ジェフ・チャンドラー)と知己になったトムは、白人とアパッチの和平交渉に当たることになった。同時に、トムはアパッチの少女ソンシアレイ(デブラ・パジェット)に恋をする。しかし、白人側にもアパッチ側にも和平に反対する者がいて……。
白人とインディアンの融和にスポットを当てた理想主義的な映画だった。インディアンにも家族がいて、公平な考え方をする。こちらが約束を守れば、向こうも約束を守る。インディアンと言えば西部劇においては問答無用の敵役だけど、それを覆して彼らを人間として捉えたのは画期的だった。今風に言えば、PCな映画である。この時代にこういうリベラルな映画が撮られたのはどういうことなのだろう? あいにくハリウッドには詳しくないので事情が分からない。
白人とインディアンとの間で徐々に信頼関係を作っていくところがいい。最初は種だったものを木に育てていく。白人にとっての郵便は、アパッチにとっての狼煙であり、どちらも心を伝えることが共通する。この郵便をインディアンは襲わない。白人の心を暴力で踏みにじらない。そういう約束をすることで、平和への第一歩を築いている。確かにいきなり全面的な和平なんて結べるわけないので、小さなことからコツコツ進めるところは理に適っている。
観ていて連想したのは、台湾映画の『セデック・バレ』だった。アリゾナでも白人は増え続け、人口ではインディアンを凌駕している。力の差はどんどん広がっている。このまま争っていたら、いつか自分たちのほうが全滅するだろう。それを避けるためには、強風に逆らわずに白人と共存することだ。たとえ生活習慣が変わっても、妥協して平和的にやっていくしかない。この辺に原住民の苦しい事情が垣間見える。
西部劇は強い敵がいてなんぼのジャンルだから、面白いか面白くないかで言えば微妙だ。けれども、題材がとても珍しいので一見の価値はあるだろう。命を救うのに人種は関係ない。平和を達成するには強い意志が必要だ。そういうメッセージを盛り込んだ志の高い映画なので、個人的には肩入れしたくなった。