海外文学読書録

書評と感想

ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』(2017/米)

★★★

黒人青年のクリス(ダニエル・カルーヤ)が、白人の恋人ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に2人で挨拶へ行くことに。クリスは人種問題について懸念しており、ローズが黒人と付き合っている事実を家族に明かしてないのを心配していた。やがて2人の乗った車は郊外にあるローズの実家へ。家族に歓迎されるクリスだったが、彼らの屋敷には黒人の使用人がいた。

黒人と白人という古来から続く人種ネタをこんな捻った形で映画にぶっ込んでくるとは思わなかった。2003年に出版された『黒人アスリートはなぜ強いのか?』【Amazon】によると、黒人が特定のスポーツ*1で優位にあること、すなわち遺伝によって優位にあることを論じるのは、アメリカ社会においてはタブーになっているという。指摘しただけで人種差別になるそうだ。この風潮が現在まで続いているかは知らないけれど、それにしたって随分と挑戦的だと思う。本作で白人たちが晒した価値観がまた倒錯していて、KKKからここまで飛躍したのかという驚きがあった。人種問題の新たな切り口と言えそう。

ただ、こういうのは精子バンクのような遺伝子工場で既に実践されているのかもしれない。白人のクライエントが黒人のドナーを求める、そういうことが現実に起こっているのかもしれない。いずれにせよ、本作は黒人を虐げてきたアメリカならではの話だと思う。

黒人も白人も、屋敷で出会う人すべてが不気味で、種明かしまではサスペンスっぽい面白さがあった。けれども、ネタが割れるとかなり荒唐無稽で、そりゃないだろうという思いが強い。物語の収拾のつけ方も雑ではないか。おいおい、こんなに人が死んで後始末はどうするのだ、たとえ生き残ったとしても警察に捕まって死刑になるだろう、と。まさか、あんな風にばったばったと人を殺していくとは思わなかった。あの終わり方はハッピーエンドなのだろうか? どう考えても、すぐに捜査が入ってクリスは逮捕されるだろう。あんなぶっ飛んだ状況を警察が信じるとは思えないし、まして裁判になったら人種差別パワーによって有罪になるはずだ。もう少しスマートな解決方法はなかったものか、と首を捻った。

運輸保安局に勤めるロッド(クリスの親友)がとてもいいキャラをしている。陽気で頼りになる黒人キャラ。殺伐とした本作における一服の清涼剤である。

*1:100m走やバスケットボールなど。