海外文学読書録

書評と感想

アダム・マッケイ『俺たちニュースキャスター』(2004/米)

★★

1970年代のサンディエゴ。地元テレビ局で夕方のニュースのアンカーマンを務めるロン・バーガンディ(ウィル・フェレル)は、ブライアン(ポール・ラッド)、ブリック(スティーヴ・カレル)、チャンプ(デヴィッド・ケックナー)といった共演者たちと男同士の馬鹿騒ぎをしていた。そこへヴェロニカ(クリスティナ・アップルゲイト)という女性キャスターが入社していくる。彼女は野心家で、女性初のアンカーマンを目指していた。ロンは彼女を性的に好きになるも、仕事の面では認めず妨害する。

昔の男尊女卑のテレビ業界を風刺したコメディ映画。個人的にアメリカ人の笑いはよく分からないのだけど、本作はスラップスティック要素が強いので比較的分かりやすかった。くだらないとは思いつつも笑える部分がちらほらある。

序盤はロンがヴェロニカに対してやたらとセクハラしていて、20世紀的野蛮を存分に味わうことができた。この時期はまだウーマンリブが台頭してきたばかり。いくぶん誇張されてるとはいえ、紅一点はこうやって嫌がらせをされたのだろう。それと、ケーブルテレビが普及する前ということで、競合する他のテレビ局とむき出しのライバル関係にあるところがいい。今じゃテレビなんてネット配信に押されてオワコンなわけで、業界にとって70年代は古き良き時代だったのだと思う。

いくつか笑えた場面を挙げよう。ロンにブリトーを投げつけられて転倒したバイク乗りが、怒ってロンの犬を橋から川へ蹴り飛ばしたのは可笑しかった。犬が放物線を描いて飛んでいく様子が可愛らしい。それと、ライバル局のキャスター陣が勢揃いして乱闘する場面も滑稽だった。ある男は火だるまになって走り回ってるし、別の男は刃物で腕を切断されてるし、見ていてしょうもないって感じがする。そしてもうひとつ、終盤でヴェロニカがヒグマの檻に突き落とされたのは愉快だった。ロンが助けに行ったときは、「そのままにしておけばいいのに」と思ったくらい。どうやら僕は、登場人物が酷い目に遭うのが好きなようだ。

とはいえ、尺の大半は退屈で、映画としてはあまり高く評価できない。これを観ることで何か得られるものがあるだろうか? と根本的な疑問を抱きつつ、我慢して完走した。続編はたぶん観ないだろう。というか、こんな映画に続編があるとは意外だ。アメリカではそんなに人気だったのだろうか。やはりアメリカ人の笑いはよく分からない。