海外文学読書録

書評と感想

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

マリオ・バルガス=リョサ『悪い娘の悪戯』(2006)

悪い娘の悪戯 作者:マリオ・バルガス=リョサ 作品社 Amazon ★★★★★ 1950年。ペルーのリマで暮らす少年リカルド・ソモクルシオは、チリから引っ越してきたリリーとルーシーの姉妹と知り合いになる。リリーと事実上の恋人関係になったリカルドだったが、ある出…

パク・ミンギュ『カステラ』(2005)

カステラ 作者:パク ミンギュ クレイン Amazon ★★★★ 短編集。「カステラ」、「ありがとう、さすがタヌキだね」、「そうですか? キリンです」、「どうしよう、マンボウじゃん」、「あーんしてみて、ペリカンさん」、「ヤクルトおばさん」、「コリアン・スタ…

マーガレット・ミラー『まるで天使のような』(1962)

まるで天使のような (創元推理文庫) 作者:マーガレット・ミラー 東京創元社 Amazon ★★★★ 博打打ちのクインはリノで有り金をすった挙げ句、車に乗せてくれた知人に山中に置いていかれる。クインは近くにある新興宗教の施設〈塔〉に助けを求め、そこの修道女に…

ジュリー・オオツカ『あのころ、天皇は神だった』(2002)

あのころ、天皇は神だった 作者:ジュリー・オオツカ フィルムアート社 Amazon ★★★★ 1942年春。アメリカで日系人に対する強制退去命令が出される。バークレーに住む一家は、母と娘と息子の3人暮らし、父はFBIによって逮捕・収監されていた。やがて一家は列車…

ニコス・カザンザキス『キリストはふたたび十字架に』(1948)

キリストは再び十字架にかけられる 作者:カザンザキス,ニコス 教文館 Amazon ★★★★ トルコの役人アガスに統治されているリコヴリシ村。復活祭の火曜日、地元の長老会は来年の復活祭で上演予定のキリスト受難劇の配役を発表する。キリスト役に選ばれたマノリオ…

ウィリアム・シェイクスピア『ヴェローナの二紳士』(1594)

シェイクスピア全集27 ヴェローナの二紳士 (ちくま文庫) 作者:W. シェイクスピア 筑摩書房 Amazon ★★★ ヴェローナの青年紳士ヴァレンタインは、恋など一瞬の快楽だとケチをつけていた。ところが、ミラノに旅行すると大公の娘シルヴィアと相思相愛の仲になり…

トーマス・ベルンハルト『凍』(1963)

凍 作者:トーマス・ベルンハルト 河出書房新社 Amazon ★★★★ 研修医の「ぼく」が勤務先の下級医から任務を託される。下級医の弟にして画家のシュトラウホを精確に観察するように、と。山岳地帯の寒村ヴェングに止宿した「ぼく」は、シュトラウホと接触して彼…

大西巨人『神聖喜劇』(1978-1980)

神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫) 作者:大西 巨人 光文社 Amazon ★★★★★ 1942年。新聞記者の東堂太郎が補充兵として対馬に招集される。彼は超人的な記憶力と持ち前の論理によって、軍隊内の様々な不条理に抵抗する。東堂は学生時代に社会主義活動の疑いをかけ…