海外文学読書録

書評と感想

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

リュドミラ・ウリツカヤ『ソーネチカ』(1997)

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス) 作者:リュドミラ ウリツカヤ 新潮社 Amazon ★★★ ソヴィエト時代。ユダヤ人にして読書好きのソーネチカは、第二次世界大戦が勃発したときに疎開し、地元の図書館で働いていた。そこへ反体制の芸術家ロベルトがやってくる…

ジェイムズ・ハドリー・チェイス『悪女イヴ』(1945)

悪女イヴ【新版】 (創元推理文庫) 作者:ジェイムズ・ハドリー・チェイス 東京創元社 Amazon ★★★ 肉体労働者だったクライヴは、親しくしていた作家から死に際に戯曲の原稿を渡され、それを自分の作品だと偽って世に発表する。戯曲が当たって有名作家になった…

ヤロスラフ・ハシェク『兵士シュヴェイクの冒険』(1921-23)

兵士シュヴェイクの冒険 1 (岩波文庫 赤 773-1) 作者:ハシェク 岩波書店 Amazon ★★★ 1914年。フェルジナント大公がサラエヴォでセルビア人に暗殺された。ボヘミア王国(チェコ)のプラハで犬の売買を生業にしているシュヴェイクは、何年か前に軍の医務委員会…

ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』(2011)

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス) 作者:オオツカ,ジュリー 新潮社 Amazon ★★★★ 20世紀初頭。下は12歳から上は37歳の娘たちが、写真でしか知らない結婚相手を頼りに日本から船でアメリカに向かう。彼女たちは来るべき新生活に夢を見ていたが、現実は…

李昂『海峡を渡る幽霊』(2018)

海峡を渡る幽霊:李昂短篇集 作者:李昂 白水社 Amazon ★★★ 日本オリジナル編集の短編集。「色陽」、「西蓮」、「水麗」、「セクシードール」、「花嫁の死化粧」、「谷の幽霊」、「海峡を渡る幽霊」、「国宴」の8編。 女性作家はエレベーターを降りると、行き…

ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』(2015)

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス) 作者: ミランダジュライ,Miranda July,岸本佐知子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/08/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る ★★★ 43歳独身のシェリルは、護身術エクササイズのDVDを販売するN…

トム・ハンクス『変わったタイプ』(2017)

変わったタイプ (新潮クレスト・ブックス) 作者:ハンクス,トム 新潮社 Amazon ★★★ 短編集。「へとへとの三週間」、「クリスマス・イヴ、一九五三年」、「光の街のジャンケット」、「ハンク・フィセイの『わが町トゥデイ』――印刷室の言えない噂」、「ようこそ…

王聡威『ここにいる』(2016)

ここにいる (エクス・リブリス) 作者:王聡威 白水社 Amazon ★★★ 夫のDVを受けた美君は6歳の娘・小娟を連れて家出し、知人の所持するマンションの部屋に移り住む。美君は自身の過去と現在、さらには関わってきた人たちについて語り、周囲の人物もまた美君につ…

ウーヴェ・ティム『ぼくの兄の場合』(2003)

ぼくの兄の場合 (エクス・リブリス) 作者:ウーヴェ・ティム 白水社 Amazon ★★★ ウーヴェよりも16歳年上の兄カール・ハインツは、ヒトラーユーゲントで教育を受け、武装親衛隊のエリート部隊である髑髏師団に入隊する。ところが、彼はロシア戦線で戦死するの…