海外文学読書録

書評と感想

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

甘耀明『冬将軍が来た夏』(2017)

冬将軍が来た夏 作者:甘耀明 白水社 Amazon ★★★ セレブの幼稚園で教諭をしている「私」の元に、死んだはずの祖母からトランクや机といった大量の荷物が送られてきた。その3日後、「私」は飲んだ帰りに自宅で園長の息子にレイプされる。死んだはずの祖母はト…

エドウィージ・ダンティカ『愛するものたちへ、別れのとき』(2007)

愛するものたちへ、別れのとき 作者:エドウィージ・ダンティカ,Edwidge Danticat 作品社 Amazon ★★★★ 2004年。35歳のエドウィージ・ダンティカは妊娠していた。一方、彼女の父親は69歳、肺病に罹って死にかけている。エドウィージは幼少期に伯父と祖国のハイ…

ジョージ・ソーンダーズ『リンカーンとさまよえる霊魂たち』(2017)

リンカーンとさまよえる霊魂たち 作者:ジョージ・ソーンダーズ 河出書房新社 Amazon ★★★★ 1862年。南北戦争の最中、リンカーン大統領の息子ウィリーが急逝する。ウィリーは防腐処理を施されて墓地に葬られたが、そこには自分の死を受け入れられない霊魂たち…

エイモス・チュツオーラ『文無し男と絶叫女と罵り男の物語』(1987)

文無し男と絶叫女と罵り男の物語 作者:エイモス チュツオーラ トレヴィル Amazon ★★★ 二千年前のナイジェリア西部に存在したラケツ・タウン。そこの王は予言によって宮殿から息子を追い出し、息子は文無し男と渾名される。さらに、副王は予言によって家から…

韓邦慶『海上花列伝』(1894)

中国古典文学大系 (49) 作者: 韓邦慶,太田辰夫 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 1969/05/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る ★★★ 清朝末期。17歳の趙樸斎が、友人の張小村と共に職を求めて上海にやってくる。趙樸斎はおじの洪善卿に連…

カルロス・フエンテス『聖域』(1967)

聖域 (ラテンアメリカ文学叢書) 作者:カルロス・フエンテス,木村栄一 国書刊行会 Amazon ★★★ 父親のもとで暮らしていたギリェルモは、母親にしてメキシコの大女優であるクラウディア・ネルボに引き取られる。青年になったギリェルモは母親への愛情を募らせつ…

ジョン・アップダイク『結婚しよう』(1976)

結婚しよう (新潮文庫) 作者:岩元 巌,ジョン アップダイク,John Updike 新潮社 Amazon ★★★★ コネティカット州グリーンウッド。所帯持ちのジェリー・コウナントが、近所の人妻サリー・マサイアスと不倫する。ジェリーはテレビのコマーシャル専門のアニメーシ…

ドン・デリーロ『ホワイト・ノイズ』(1985)

ホワイト・ノイズ 作者:ドン・デリーロ,森川 展男,Don Delillo 集英社 Amazon ★★★★ 大学教授のジャック・グラドニーは、ヒトラー学科を創設した人物。彼は妻のバベットとそれぞれの連れ子4人と暮らしている。あるとき、バベットが奇妙な薬を飲んでいることが…