海外文学読書録

書評と感想

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

E・M・フォースター『ハワーズ・エンド』(1910)

ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7) 作者:E・M・フォースター 河出書房新社 Amazon ★★★ シュレーゲル家の長女マーガレットは、妹ヘレンがウィルコックス家に出入りしたことをきっかけに、ウィルコックス夫人と懇意になる。ところが、間…

遅子建『アルグン川の右岸』(2006)

アルグン川の右岸 (エクス・リブリス) 作者:遅 子建 白水社 Amazon ★★★★ 90歳の「私」はアルグン川の右岸に住むエヴェンキ族の女で、エヴェンキ族最後の酋長の妻だった。その彼女が一族の過去を物語る。エヴェンキ族はトナカイと共に暮らす狩猟民族だったが…

グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』(1978)

ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫) 作者: グレアムグリーン,Graham Greene,加賀山卓朗 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2006/10/12 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 35回 この商品を含むブログ (42件) を見…

フィリップ・ロス『乳房になった男』(1972)

乳房になった男 (1978年) (集英社文庫) 作者:フィリップ・ロス Amazon ★★★ 38歳の文学教授デイヴィッド・ケペシュは、体に些細な症状が出た後、全身が女性の乳房になってしまう。彼は目が見えず、物が食べられず、匂いを嗅ぐことができない。入院して静脈注…

リチャード・パワーズ『オルフェオ』(2014)

オルフェオ 作者:リチャード パワーズ 新潮社 Amazon ★★★★ アメリカ同時多発テロから10年後。70歳の音楽家ピーター・エルズは、仕事を引退して趣味で細菌の遺伝子操作をしていた。目的は、音楽ファイルを生きた細胞に入れること。ところが、飼い犬の死をきっ…

ハビエル・セルカス『サラミスの兵士たち』(2001)

サラミスの兵士たち 作者:ハビエル セルカス 河出書房新社 Amazon ★★★★ 新聞記者のハビエル・セルカスは、かつて小説家になろうとして挫折していた。その彼が、60年前にカタルーニャで起きたスペイン内戦末期の集団銃殺について調べることになる。1939年、フ…

董若雨『鏡の国の孫悟空』(1640)

鏡の国の孫悟空 (東洋文庫0700) 作者:董若雨 平凡社 Amazon ★★★ 芭蕉扇を使って火焰山を鎮火させた後の話。一人で托鉢に出かけた孫悟空は、いつの間にか時代が新唐王朝に入っていることに気づく。そこの宮廷で駆山鐸の噂を耳にした悟空は、その所有者である…

ヴィエト・タン・ウェン『シンパサイザー』(2015)

シンパサイザー 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:ヴィエト タン ウェン 早川書房 Amazon ★★★★ ヴェトナム戦争。サイゴンが陥落し、南ヴェトナムの将校たちはアメリカ西海岸に難民として移り住むことになる。大尉の「私」は表向き将軍に仕えていたが、実は…