海外文学読書録

書評と感想

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ニコス・カザンザキス『キリスト最後のこころみ』(1951)

キリスト最後のこころみ 作者:ニコス・カザンザキス 恒文社 Amazon ★★★★ ナザレで大工をしているイエスは、ローマ人のために処刑用の十字架を作っていた。そのことで周囲の人々からは軽蔑されるも、彼にとってその行為は自分をメシヤに選んだ神に対する抵抗…

ミハル・アイヴァス『もうひとつの街』(1993,2005)

もうひとつの街 作者:ミハル・アイヴァス 河出書房新社 Amazon ★★★ 雪の降るプラハ。古書店で「私」は、書名も著者名も記されていない奇妙な本を買う。それはこの世のものではない文字で綴られていた。本の入手を機に、「私」は浮世離れした現実が次々と現れ…

老舎『駱駝祥子』(1936)

駱駝祥子―らくだのシアンツ (岩波文庫) 作者:老 舎 岩波書店 Amazon ★★★★★ 若くして両親を亡くした祥子は、北京に出てきて車夫になる。懸命に働いて遂に自分の車を手に入れるも、精華へ客を乗せていく途中で兵隊に徴発されてしまう。部隊は戦闘に敗北し、祥…

パク・ミンギュ『ピンポン』(2006)

ピンポン (エクス・リブリス) 作者:パク・ミンギュ 白水社 Amazon ★★★★ 中学校で凄惨ないじめを受けている釘とモアイ。2人は原っぱのど真ん中で卓球台を見つける。彼らはそこで卓球をするようになるのだった。一方、2人をいじめていた同級生はある事件を機に…

サマセット・モーム『月と六ペンス』(1919)

月と六ペンス (新潮文庫) 作者:サマセット モーム 新潮社 Amazon ★★★ 作家の「わたし」が画家のストリックランドについて回想する。ロンドンで株式仲買人をしていたストリックランドは、40歳のとき突如として妻子を捨てて出奔する。浮気が原因だろうと考えた…

甘耀明『鬼殺し』(2009)

鬼殺し(上) (EXLIBRIS) 作者:甘耀明 白水社 Amazon ★★★ 日本統治下の台湾。日本軍は真珠湾を奇襲して太平洋戦争に突入した。関牛窩に住む怪力の少年・帕(劉興帕)は、日本陸軍の鬼中佐・鹿野武雄に見初められてその養子になり、鹿野千抜と名乗るようになる…

ジェイムズ・エルロイ『アンダーワールドUSA』(2009)

アンダーワールドUSA 上 作者:ジェイムズ・エルロイ 文藝春秋 Amazon ★★★ 1968年。(1) 元刑事のウェイン・ジュニアは、中米にカジノを建設しようというマフィアの意向を受け、共和党大統領候補のリチャード・ニクソンに裏金を渡しに行く。(2) FBI捜査官の…

20世紀中国文学お勧め100選(20世紀中文小說100強)

最近、現代中国文学に興味があって、Twitterでその旨をつぶやいたところ、当該分野に造詣が深い方から20世紀中文小說100強というページを教えて頂いた。香港の雑誌社によるランキングらしい。このエントリのタイトルは「20世紀中国文学お勧め100選」となって…

呉明益『歩道橋の魔術師』(2011)

歩道橋の魔術師 (河出文庫) 作者:呉明益 河出書房新社 Amazon ★★★★ 短編集。「歩道橋の魔術師」、「九十九階」、「石獅子は覚えている」、「ギラギラと太陽が照りつける道にゾウがいた」、「ギター弾きの恋」、「金魚」、「鳥を飼う」、「唐さんの仕立屋」、…

カリンティ・フェレンツ『エペペ』(1970)

エペペ 作者:カリンティ・フェレンツ 恒文社 Amazon ★★★★ 言語学者のブダイはヘルシンキ行きの飛行機に乗ったつもりが、間違って別の便に乗ってしまい、見知らぬ土地で降ろされてしまう。そこはやたらと行列ができる人口密集都市で、ブダイの知らない謎の言…