★★★★
1980年代の西京。周敏が人妻の唐
荘之蝶は女に接吻して言った。「だったら笑っておくれ」。女はそのことばどおりに笑った。二人はあらためて抱き合って、ベッドに転がった。荘之蝶がまたものしかかると、女が言った。「またできるの?」。荘之蝶が言った。「できる。ほんとにできるんだ!」□□□□□□(作者、五百十七字削除)。(上 p.247)
西京は西安がモデルの地方都市で、四方が城壁で囲まれている。今まで読んできた中国文学は、どれも田舎を舞台にした小説ばかりだったけれど、都市を舞台にしたものもそんなに印象は変わらなくて、中国人の本質はどこに住んでいても同じだなと思った。誰も彼もが一人前の弁論家で、思ったことをオブラートに包まず口に出し、男も女も当たり前のように罵り合う。自分の利益を守るには言葉がすべて、時には相手を丸め込めようと作り話を拵える。各々が言いたいことを遠慮なく何でも吐き出すという世界観がすごく新鮮。さらに生活もソフィスティケートされておらず、みんな都市に住む田舎者といった印象だけど、実はそこが魅力的でついついのめり込んでしまう。空気を読むことに慣れきった日本人には、この剥き出しの人間関係はなかなか衝撃的だったりするのだ。よく中国人は日本人のことを虚礼がどうのって批判するけれど、本作を読んでその意味が分かったような気がする。
主人公の荘之蝶は最初出てきたときは気さくないい人っぽかったのに(牛の腹の下で四つん這いになって乳を吸うところがポイント高い)、女関係についてはだらしがなくて、唐