海外文学読書録

書評と感想

ミシェル・ウエルベック『ランサローテ島』(2000)

★★★

フランス人の「私」がアフリカ沿岸沖のランサローテ島へ旅行に行く。そこは火山のある荒涼とした島だった。「私」は現地でベルギー人の男、ドイツ人のレズビアンカップルと知り合う。

「苦手なのは、アラブの国じゃなくてイスラムの国なんです」と私は言った。「アラブの国で、イスラムではないところはありますか?」これはクイズ番組の難問に使えそうだった。(p.5)

写真集+短編小説という構成。

まあ、観光小説には違いないのだけど、セックスと新興宗教に焦点が当たっているところが著者らしいかもしれない。「私」とレズビアンカップルは初対面なのに3Pに及んでいて、ヨーロッパ人はこんなに開放的なのかと驚いた。

新興宗教もその教義がなかなか興味深い。名前はラエリアン・ムーブメントと言って、人類とその他の生命を作ったのは異星人のエロヒムだとか何とか。しかも、遺伝子工学に基いて作ったという。最初読んだときは著者の創作かと思ったけど、どうやら実在する組織らしく、日本語の公式サイトまで存在する。

あとは作品全体を覆う物事への率直な見方が面白くて、政治的な正しさに配慮しないところが気持ち良かった。これが日本だったら確実に叩かれている。